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再起の空
西日が射す放課後の美術室は、水彩絵の具の匂いで満ちている。
掛井景子は画架に向かい、一心不乱に絵筆を振るい続けていた。
その目は親の敵を睨むが如くであり、唇は苦しげに引き結ばれている。
高校の制服の上に着た前掛けは、青い斑模様に汚れていた。
課題を終えられない生徒が一人居残りをしている。状況だけを語ればそれだけのことだった。
『空』を題材に絵を描く。
指定されたのは題材だけ。それ以外はどんな空を描くかは自由。
青空。夕焼け。雨。虹。見たままのものでも、想像の空でもいい。
自由度こそ高いが、決して難しい課題ではなかった。
極端な例を挙げれば、画用紙一枚を青一色に塗っても可。現にそれに近い絵も提出されており、問題とされていないことも景子は知っている。
単なる美術の課題の一つであり、多少手を抜いたところで成績にたいした影響はない。生徒達の大半がその程度に認識していた。
しかしその課題を、景子は毎日のように描き続けていた。
藻掻くように。足掻くように。
画用紙を埋めればそれで済むはずの課題に、何日も向き合っていたのだった。
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