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「え……?」
私はしばらくしてその一字を発音した。突然すぎたので、先ほど彼の発した言葉が全く頭に入って来なかったのだ。そのまままたポカリと口を開けていると、彼はまた自信なさそうにモゴモゴと呟いた。
「元カノに手紙書いたんだ……もちろん本当に渡すつもりはないけど、ずっと忘れられないからさ……蹴りをつけたくて、とりあえず思うことを書いたんだよ」
彼は私の顔を見ると、肩を落とした。
「引いたろ?元カノに手紙とか……」
シュンとした彼を見て、私は慌てて首を振った。
「いやいやいや……ちょっとびっくりしただけで……でも、渡したらいいと思いますよ?」
「え……?」
驚いている彼に私は微笑んだ。
「手紙、渡しましょうよ!まだ伝えきれてないから手紙にしたんですよね?だったら渡すべきです。だって、渡さない方がモヤモヤするでしょ?」
そして、ポンと彼の肩を叩いた。
「恋の【辞書】に"不正解"なんて言葉はありません!私、応援します!」
すると、彼は握り締めた手紙を見ながら口元を緩ませた。
「恋の【辞書】に"不正解"はないか……ありがと。なんか勇気出たよ」
そしてすっきりした表情を浮かべながら、彼は颯爽と立ち去っていった。私はその背中を見送りながら彼の幸運を祈った。
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