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「医療部隊も心配です。こちらは落ち着いていますが、前線で新たな被害が多く出ているかもしれない。オリヴァーがいますが、彼だけで対応できるかは疑問です。医療品も、どうなっているか」
「……誰かが、ファウストに現状を伝え奴を反転させるしかあるまい」
シウスの判断に、全員は苦い思いをしながらも頷くしかない。これが、正しい判断だ。
ただ問題は誰が最前線にこれを伝えに行くかだ。危険が大きいうえに、大人数は避けたい。目の前に布陣した敵に悟られれば撃破は免れない。
「……僕がいく」
そう言ったのは、ウェインだった。
「第二師団は陽動、斥候。こういう場面ではうってつけだ」
「ですがウェイン」
「こっちは籠城できる! でも、最前線のファウスト様やアシュレーが後方を突かれたら危ない。後方、預かってたのにこれじゃ」
ギュッと、ウェインは手を握る。そして、強情な目で周囲を見回した。
「一人ではいかない。決死行だけど……誰かついてきてくれるなら」
誰もが一瞬、言葉を詰まらせた。安全策はないだろう。
だがそこで、一つ手が上がった。
「俺でよければ」
「チェスター!」
思わぬ申し出に、ウェインは驚いたように声を上げる。それに続いて、三つの手が第二師団から上がった。
「やってやりましょう、ウェイン様!」
「俺達は第一や第五の裏方じゃない! 立派な騎士だ!」
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