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だが次に男が見たのは、馬の足と地面だった。
「え?」
何が起こったのか、理解しなかっただろう。だが、理解した時には遅すぎた。黒騎士の長剣は向かってきた馬の首ごと男の胴を真っ二つに切り離していたのだ。
「なんだこいつ!」
「やりやがったな!」
いきり立つ仲間が同じく剣を抜いて飛び出していったが、結果は変わらない。汚い悲鳴を上げてただ地面に肉塊を転がす結果となった。
ジェームダル陣営は突如現れた黒騎士によって、地獄絵図へと変わっていった。
「ぐはぁ!!」
「ひぃぃぃ! 助け! ぎゃぁぁ!」
黒騎士の剣が容赦をするはずがない。向かって来た馬の首を切り、横転した者を問答無用で切り伏せる。手に持つ長剣は騎乗のままで十分な長さがあり、その威力は踏ん張っていなくても力がある。
「たっ、たすけ……」
地に転がった男が命乞いをする。へっぴりの体で後退りながら涙と鼻水でグチャグチャの顔で見上げた先に、黒い影が差す。
強靱な四肢をもつ黒馬が明らかな殺意を秘めて前足を上げ、男を容赦なく踏み潰す。男は内臓も骨もグチャリと踏み潰されて大量の血を吐きながら絶命していく。グチャッバキバキバキという臓腑と骨を砕かれる音が、男の最後に聞いたものとなった。
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