336人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
願いよ届け(アシュレー)
騎士団砦は迎え入れるように門を開けていた。そこにはゼロスとコンラッド、そしてランバートが出迎えてくれたが、アシュレーはランバートを見て目を見開いた。
「アシュレー様」
「ランバート、お前……」
「それは後でいいです。とにかく早く」
何が、早くなんだ。
分からないまま、不安が胸を埋めていく。ランバートが前を急ぐ。その足は処置室の横、重傷者が運ばれる部屋へと向かっているように思えた。
扉を開けると、真っ白い部屋の中で不安げな顔をしたエリオットと、知らない白髪の人物がいた。
髪の色だろうが、シウスに似た神秘性を感じる。その人物はベッドに寝ている者の手を取り祈っていたが、扉が開いた事で薄紫の瞳をこちらへと向けた。
「……ぁ」
眠っている者の顔が、見えた。途端、膝から崩れてしまいそうだった。
ウェインが眠っている。息をしているのか、遠目では分からないくらい胸の上下が少ない。
「アシュレー」
「どうして、何が……」
「……背後から、矢を」
それだけで、言い知れぬ恐怖が全身を包む。無防備な後ろから、矢を受けた? 意識がないのは、眠っているんじゃない? 胸の上下が少ないのは、もう駄目なのか?
最初のコメントを投稿しよう!