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ランバートでも流石に笑みが引きつった。
ここに来る途中、炎を上げる櫓を見て後悔をした。げっそりした第一師団が薪でもくべるように人だったものを投げ込んでいた。側では祈りの言葉を唱える者もあったが、光景があまりに異様だ。
草を踏む、その足元が微妙にぬかるんでいたのだがここ暫く雨は降っていない。この事実を確認する勇気はなく、知らんぷりしてここまできたのだ。
「では、私は外で火葬を見守っておりますので、お二人はどうぞお部屋に」
「おい、オリヴァー」
「ようやく我等が黒皇の不機嫌が改善されるかと思うと、徹夜くらい楽ですよ。ほらほら、心の栄養補給も大事な事。もう何ヶ月も会っていないのですから、たっぷりと愛情を確かめてくださいませ」
「オリヴァー!」
顔を赤くしたファウストが怒ったが、どこ吹く風だ。ヒラヒラッと手を振ったオリヴァーが出て行くと、ファウストは困ったように頭をかいた。
「まったく、流石にこの状態では……」
「だよな」
苦笑して、それでも側にある人を見ると心が緩む。側に行って、胸に飛び込んで、頬に手を伸ばし確かめるようにキスをした。
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