336人が本棚に入れています
本棚に追加
「テンション上がるとちょっと戻ってくるのに時間がかかる。ファウスト殿、すまない」
「あぁ、いや……」
ダンが笑い、キフラスは申し訳なさそうにしている。
アルブレヒトが戻ってくるまで、ランバートは道中キフラスに助けて貰った事を話した。戦いやすかったと言えば、ほんの少しファウストの目が怖くなる。これに見られたキフラスのほうは、若干身構えた。
「ふふっ、軍神は心が狭い。こんな事で妻の浮気を疑うなんて、いけませんよ」
「え?」
楽しそうな声に反応したファウストの前に、ようやく戻ってきたらしいアルブレヒトが丁寧に頭を下げる。さっきまでと別人過ぎる。
「大変お見苦しい所をお見せしました。何せこのような立派な加護付きに出会える事が稀でして、テンションが上がってしまいまして」
「あぁ、いや」
「ジェームダル王太子、アルブレヒトと申します」
「帝国騎士団、騎兵府団長のファウストだ。色々と辛い事が多かったと聞きます。今は、大丈夫だろうか?」
「お陰様で、まったく問題無く過ごしておりますよ」
薄紫の瞳が柔らかくファウストと、その隣りに立つランバートを見つめた。
「軍神トールと、その妻シヴ。二人の出会いは約束されていたのかもしれませんね」
「え?」
最初のコメントを投稿しよう!