変身

1/1
55人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ

変身

「え、俺転校するの‥?」 家に帰ると、何やら騒がしくて。家中どたばたしてるから何事かと思った。そしたら母さんが、 「この家から引っ越すから、こうきは転校しなきゃなの」 なんて言ってくるから、もうびっくりだよ。 何でも、父さんが社長になるんだって。じいちゃんが世代交代するって今日いきなり発表したらしい。 ‥‥じいちゃん、突発的なとこあるからな。 えっと、とりあえず父さんは地方の建物の一番偉い人から、全体の一番偉い人になるってことであってるかな? それで、本社の近くにある豪邸──もとい、じいちゃんの家に引っ越すことになった、っていうところまでは話してくれたんだけど‥ 「ねぇ、あんたちょっとこっち来なさいよ」 あ、姉ちゃん。 「さっさとしなさい。邪魔になるでしょ。」 これは、すごく怖い俺の姉ちゃん。俺の一個上で高校三年生。すごく勉強できるくせに、ちょっと頭がおかしい。 ‥俺は、姉ちゃんが怖いからいっつも言うことをきいてる。嫌なことでもね。 「いい?あんたは、私立カタラーナ高校に転校することになったから。それでね、この高校、全寮制の男子校なのよ。 ‥あんた、久しぶりに役にたったわね。いい妄想の材料になるわ。」 !! ‥うそ、姉ちゃんが俺を誉めてる!なんで? 「姉ちゃん、俺なにしたっけ?なんで誉めてくれてるの?前に頼まれたみたくおっきいフランクフルト食べたり、顔に練乳塗ったりしてないよ?」 「だから、男子校に転校するでしょう?何度も言わせないで、うるさいわね。」 たったそれだけ?でも、これ以上繰り返したら怒りそうだからもう止めよう。 ‥‥そして、俺は今、自分の部屋のものを整理してダンボールに詰めてる。 俺の家はじいちゃんの家と違って、ごく普通の家だ。だから、部屋は姉ちゃんと共同なんだけど‥ 「姉ちゃん、それ全部持ってくの‥?」 姉ちゃんは沢山本を持ってる。俺には見せてくれたことないけど、とっても面白いってことはわかるよ。だって姉ちゃん、本読んでる時すごく楽しそうだし、顔が変になるくらい笑ってる。というかニヤニヤしてる。 で、その本を全部ダンボールにいれてるんだけど。もう三つ目だよそのダンボール‥ 「何、手伝ってくれるの?あら、いい弟じゃない。」 !! もしかして誉められてる?やった! ======================================== ‥俺は姉ちゃんの荷造りを手伝った結果、寝るのが遅くなりました。 姉ちゃんったら俺に手伝わせといて、自分は本読んでたんだ!俺は自分のもやらなきゃいけないけど、ちゃんと手伝ってあげたのに。 そのせいで俺、最後の日なのに授業中に寝ちゃって、先生に怒られたんだよ! お別れの挨拶の時に、 「向こうでは授業で寝ないように」 っていじられちゃったんだよ!? まだ2年になったばっかりだし、クラス替えあったからあんまり話したことある人少なかったのに。昼休みに書いたっていう手紙には 「こうき、ちゃんと睡眠とれよ?」 「眠くなったら中指押すといいらしい」 「ばれないようにまぶたに目書けば?w」 って!! 皆息ぴったりだね! 引っ越す直前、姉ちゃんのとこには沢山友達が来てた。俺には0人だよ。 言い訳すると、今日は普通に平日で学校あるんだ。今はまだ10時くらいで、皆授業受けてるはず。この女の子達は、姉ちゃんと魂の友なんだって。だから授業抜け出してきたらしい。先生に怒られても良いのかな。 魂の友達は最後に、僕にもお別れの言葉くれた。 「君なら絶対王道になれるよ!!頑張ってね!」 って。王道?何それ。意味はしってるけど、王道になるってどういうこと? ラーメンの王道はやっぱ味噌でしょ!とか、そういう使い方だよね?俺の知らない王道があるのかな。 ==================================== ==== じいちゃん家着いてすぐ、俺は姉ちゃんに捕まった。 「ね、姉ちゃん‥。何する気なのかな‥」 「いい?逆らったら殺すから」 だ、誰かっ!姉ちゃんが殺人鬼になっちゃう!!! 「姉ちゃんは俺をどうしたいの!そんな格好、俺いじめられるよ!」 姉ちゃんの手には、実験で爆発でもしたの?っていうような、もさもさのかつらが。それと牛乳瓶眼鏡。 「私の言うことが聞けないの?あんたはね、これで王道になるのよ!ちょうど今時期じゃない? 私は夢を叶えたいの、王道を現実にしたいのよ!」 よくわからないけど、姉ちゃんの夢を叶えるためにはそのかつらと眼鏡をかけて、王道?に俺がならなきゃいけないんだって。 「俺、流石にその格好は‥」 「いいわ、わかった。このお願いで、最後にする。」 な──なんだって‥‥‥‥‥ もうこれで、あんなことやこんなことをしなくてもいいの‥‥‥‥‥? ‥‥‥‥本当? 「‥俺、なるよ。王道に。」(キリリ 「流石私の弟だわ。はい、これ。」 俺、誉められたの?また?なんだか誉めるのが大量生産されてる。 ─────とりあえず‥‥ こうして、俺はすごくすごください男子高校生に生まれ変わったのです。 友達、出来るかな‥‥‥
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!