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変身
「え、俺転校するの‥?」
家に帰ると、何やら騒がしくて。家中どたばたしてるから何事かと思った。そしたら母さんが、
「この家から引っ越すから、こうきは転校しなきゃなの」
なんて言ってくるから、もうびっくりだよ。
何でも、父さんが社長になるんだって。じいちゃんが世代交代するって今日いきなり発表したらしい。
‥‥じいちゃん、突発的なとこあるからな。
えっと、とりあえず父さんは地方の建物の一番偉い人から、全体の一番偉い人になるってことであってるかな?
それで、本社の近くにある豪邸──もとい、じいちゃんの家に引っ越すことになった、っていうところまでは話してくれたんだけど‥
「ねぇ、あんたちょっとこっち来なさいよ」
あ、姉ちゃん。
「さっさとしなさい。邪魔になるでしょ。」
これは、すごく怖い俺の姉ちゃん。俺の一個上で高校三年生。すごく勉強できるくせに、ちょっと頭がおかしい。
‥俺は、姉ちゃんが怖いからいっつも言うことをきいてる。嫌なことでもね。
「いい?あんたは、私立カタラーナ高校に転校することになったから。それでね、この高校、全寮制の男子校なのよ。
‥あんた、久しぶりに役にたったわね。いい妄想の材料になるわ。」
!!
‥うそ、姉ちゃんが俺を誉めてる!なんで?
「姉ちゃん、俺なにしたっけ?なんで誉めてくれてるの?前に頼まれたみたくおっきいフランクフルト食べたり、顔に練乳塗ったりしてないよ?」
「だから、男子校に転校するでしょう?何度も言わせないで、うるさいわね。」
たったそれだけ?でも、これ以上繰り返したら怒りそうだからもう止めよう。
‥‥そして、俺は今、自分の部屋のものを整理してダンボールに詰めてる。
俺の家はじいちゃんの家と違って、ごく普通の家だ。だから、部屋は姉ちゃんと共同なんだけど‥
「姉ちゃん、それ全部持ってくの‥?」
姉ちゃんは沢山本を持ってる。俺には見せてくれたことないけど、とっても面白いってことはわかるよ。だって姉ちゃん、本読んでる時すごく楽しそうだし、顔が変になるくらい笑ってる。というかニヤニヤしてる。
で、その本を全部ダンボールにいれてるんだけど。もう三つ目だよそのダンボール‥
「何、手伝ってくれるの?あら、いい弟じゃない。」
!!
もしかして誉められてる?やった!
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‥俺は姉ちゃんの荷造りを手伝った結果、寝るのが遅くなりました。
姉ちゃんったら俺に手伝わせといて、自分は本読んでたんだ!俺は自分のもやらなきゃいけないけど、ちゃんと手伝ってあげたのに。
そのせいで俺、最後の日なのに授業中に寝ちゃって、先生に怒られたんだよ!
お別れの挨拶の時に、
「向こうでは授業で寝ないように」
っていじられちゃったんだよ!?
まだ2年になったばっかりだし、クラス替えあったからあんまり話したことある人少なかったのに。昼休みに書いたっていう手紙には
「こうき、ちゃんと睡眠とれよ?」
「眠くなったら中指押すといいらしい」
「ばれないようにまぶたに目書けば?w」
って!!
皆息ぴったりだね!
引っ越す直前、姉ちゃんのとこには沢山友達が来てた。俺には0人だよ。
言い訳すると、今日は普通に平日で学校あるんだ。今はまだ10時くらいで、皆授業受けてるはず。この女の子達は、姉ちゃんと魂の友なんだって。だから授業抜け出してきたらしい。先生に怒られても良いのかな。
魂の友達は最後に、僕にもお別れの言葉くれた。
「君なら絶対王道になれるよ!!頑張ってね!」
って。王道?何それ。意味はしってるけど、王道になるってどういうこと?
ラーメンの王道はやっぱ味噌でしょ!とか、そういう使い方だよね?俺の知らない王道があるのかな。
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じいちゃん家着いてすぐ、俺は姉ちゃんに捕まった。
「ね、姉ちゃん‥。何する気なのかな‥」
「いい?逆らったら殺すから」
だ、誰かっ!姉ちゃんが殺人鬼になっちゃう!!!
「姉ちゃんは俺をどうしたいの!そんな格好、俺いじめられるよ!」
姉ちゃんの手には、実験で爆発でもしたの?っていうような、もさもさのかつらが。それと牛乳瓶眼鏡。
「私の言うことが聞けないの?あんたはね、これで王道になるのよ!ちょうど今時期じゃない?
私は夢を叶えたいの、王道を現実にしたいのよ!」
よくわからないけど、姉ちゃんの夢を叶えるためにはそのかつらと眼鏡をかけて、王道?に俺がならなきゃいけないんだって。
「俺、流石にその格好は‥」
「いいわ、わかった。このお願いで、最後にする。」
な──なんだって‥‥‥‥‥
もうこれで、あんなことやこんなことをしなくてもいいの‥‥‥‥‥?
‥‥‥‥本当?
「‥俺、なるよ。王道に。」(キリリ
「流石私の弟だわ。はい、これ。」
俺、誉められたの?また?なんだか誉めるのが大量生産されてる。
─────とりあえず‥‥
こうして、俺はすごくすごください男子高校生に生まれ変わったのです。
友達、出来るかな‥‥‥
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