第四章 アリオストポリのバザールにて

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 ハリアーも、ひらりと馬車を降り、小気味良い音とともに地面に立つ。 「えらく優遇されてるな、グラム。よっぽどショバ代、弾んだのか」  彼女が呆れた調子で言うと、道案内の兵士が小さく笑った。 「グラさんは、毎回毎回かなり売り上げて、たっぷり上納金を入れてくれてるからな。王室の覚えもめでたい上得意、ってところだ」  そのグラムが、馬車の座席に掛けたままのプリモに向かって、小さな手を差し伸べた。 「さ、どうぞ、奥様」 「お、『おくさま』?」   思わず鸚鵡返しのプリモは、意図せずにハリアーを見遣った。  ハリアーがさも可笑しそうに口許を緩めつつ、プリモに向かってうなずく。  プリモも特に否定の言葉は発さないものの、わずかなためらいとともにグラムの手を取った。 「あ、ありがとうございます」  プリモが石畳に降り立つと、逆にグラムは馬車に荷台へと跳び乗った。  荷台には、古びて黄ばんだ折りたたみテントと、例の奇妙な黒い箱だけが載せられている。  荷台のグラムは、黒い箱をぽんと叩き、にんまり笑った。 「さて、がっちり儲けさせてもらうとするか」  そして彼は、道案内の兵士に向かって小さな手を差し出した。 「それじゃあ、今回のバザールの見取図を見せておくれよ」     
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