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「先日、デモテープを聴かせていただいたのですが、私個人的にとても気に入りましたよ。きっとあなた達の復活を待っているファンの方も大勢いますよ。」
「ありがとうございます。」
「それでは初ライブの日程なのですが…この日なんてどうでしょう?この日は他にも期待されているバンドがいくつか出るのでお客さんもだいぶ来ると思いますよ。」
「じゃあ是非その日で」
「了解しました…っと。それではアツシ君、これからも宜しくお願いしますね。」
「はい、宜しくお願いします。」
アツシは差し出された手を握り返した。
「ところで、君たちのバンド名はもう決まってるんですか?」
「『Zill』です」
初練習から1ヶ月ほど経ち、もうすでに持ち歌を持っていた4人はすぐにでもライブに出られる状態にまできていた。そこでアツシはライブハウス側と初ライブの日程を交渉しにきていたのだ。
Zill(ジル)というバンド名は彼が誰にも相談せず勝手に付けたもの。短くて耳に残る名前がいい、とアツシは考えたのだ。
ブッキングマネージャーとの話し合いが終わり、アツシはメンバーにメールを一斉送信した。
《12月24日 初ライブ決定 Zillリーダーより♪》
―――そのメールをタケルは真っ昼間のホテルのベッドの上で見た。その横には一人の女。
この日か。別に大事な用はないな。
返事を送ろうとするタケルに女はすり寄ってきた。長い髪や生肌が体にまとわりついてくる。
「メール?誰から?」
「……」
タケルはスマホを閉じ、ベッドから降りると服を着始めた。
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