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――夕方、タケルは車でケイの住むマンションまで迎えに行った。BGMは暗めのロック。外にはパラパラと雪まで降り出した。
車からマンションが見えると、ケイはもう外に立っていた。
足らへんまである長いコートに白いマフラー。どこから見ても女にしか見えないような格好だった。
タケルの車を見つけ、大きく手を振るケイ。タケルはマンション前の道脇に車を止めた。
ドアを開け、白い息を吐きながら寒そうに中へ入ってくるケイ。
「部屋の中で待ってればよかったのに。着いたら連絡するつもりやったし。」
「早くタケルに会いたかったんやっ」
そう言ってニコニコするケイ。
「あぁそう。」
もう騙されないぞ、と、タケルは適当に返事を流した。
「ほんまやで?」
「はいはい」
それにしてもまだこのケイという人物に慣れる事ができない。本当に自分は人見知りかもしれないと思っていた時、ケイが不満そうに言った。
「ってかなんでこんな暗い曲かけてんの!?パーティーの前なんだから、明るい曲かけようや!」
「ええねん」
「だってこんなんムードないやん!!」
ケイはそう言うと勝手にCDをあさり、ノリのいい曲に入れ替えた。
「…ま、別にいいけど。」
タケルはそう言うと、呆れながらも笑ってしまった。
二人は途中、スーパーに立ち寄った。
「タケル、みんなはどのお酒が好きなんかな?」
「さぁ、ビールでええと思うけど。」
タケルは段ボールに24本入りの缶ビールを見つけると1箱カートに乗せた。
「みんな結構飲むの??」
「リョウがめちゃくちゃザルやからなぁ。1箱じゃ足りんかも。」
そう言って笑うと、ケイが目を丸くさせた。
「へぇ!リョウちゃんすごい!」
「…ってか何でお前みんな『ちゃん』付けなん?俺だけ呼び捨てやん。」
「だって『タケちゃん』とかなんか気持ち悪いやん、タケルっぽくない!」
「ふぅん」
「あっ、おつまみも買わな!どこやろー?」
そう言って走って行くケイ。その姿は無邪気な子供のようだった。
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