【第3話】 『光』

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 ざわつくホール内。 「まだ始まんないの?」 「早く始めろよ!」  そんな罵声が飛ぶ中、ホールの照明がフッと消えた。  静まりかえるホール内。  その静けさをSEの音が壊した。ローテンポな重たい暗めのロック。きっとタケルの趣味だろう。低音が体に響く。  そんな爆音の中、一気に幕が開きケイ以外の3人がステージに姿を現した。  キャー!!  前列にいる女の子たちの悲鳴に似た黄色い声が飛ぶ。タケルの真ん前に立って力一杯タケルに向かって手を伸ばしている一人の女の子。タケルは女の子の頭を撫で、ギターを持つとタバコに火を付けた。ファンからしてみればメンバーそれぞれの行動一つ一つが素敵でたまらない。    そして最後にケイがステージへ出てきた。それと同時に鳴りやむSE。  そのケイの姿を見てざわつく会場。 「誰?すっごい美人。」 「女?」 「え?男じゃないの?」    ざわめきの中、ケイはマイクスタンドの前に立って目を閉じた。  タケルのアルペジオから始まるイントロ。  そして、全パートが同時に美しい音を発した。  ノることも忘れてただ見入っている観客。  ケイは黒い髪を揺らしながら透き通るような声を音に絡みつけてくる。ケイの刺すような瞳は見る者の目を奪った。照明を体中にあびて歌う姿は、まるで美しい天使のよう。  観客はみな圧倒されていた。Zillの曲、音色、そして4人が放つオーラに。  高鳴る興奮と感動の中、客席とステージは一体となった。
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