【第4話】 『傷』

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「ケイー?」 ったくどこに行っちゃったんだよ  ケイを探し回るリョウ。その耳にトイレの方から水の流れる音がした。 ジャーッ 「ケイ?いるのか?」  トイレに入ると、洗面所でケイが水を出しっぱなしにしてもたれていた。 「大丈夫?調子悪いの?」  ケイの背中をさすってやるリョウ。 「大丈夫、ちょっと気分悪かっただけだから。」  ケイは体を起こして少し笑ってみせた。 「タケルと何かあった?」  リョウの言葉に一気に曇ったケイの表情。それを見てリョウは優しく微笑んだ。 「何があったんか知らないけど、あんま気にすんなって。タケル、口は悪いけど、根はいいヤツだからさ。ちょっと短気なのが玉にきずだけどな。あ、そういえばぁ…」 リョウは自分が東京からこの地に引っ越して来たとき、タケルがよくしてくれた事などを笑いながらケイに話した。 「俺が1回駅前でタケルと待ち合わせしてたときに変な奴らに絡まれそうになった事があって。俺別にそんなのどうでもいいから適当にあしらってたら、タケルが飛んできてそいつら全員捕まえてさぁ。土下座させて、『あやまれ』って、あの冷たい口調で言ってさぁ」  タケルとの思い出話をするリョウは楽しそうだ。 「あいつキレても静かだからね、キレてんのかどうかさえ分かんなくて逆にスゲー怖かった」 「へぇ、そんなことがあったんや」  リョウの話を聞きながら少しづつ元気を取り戻していったケイ。リョウはそれをみて安心した。 「ちょっと笑ってくれたな、よかった。…あ、もうこんな時間だ。早く戻らねぇと!」 「うん。あ、リョウちゃん…」  急いで控え室に戻ろうとするリョウを引き留めるケイ。 「ん?何?」 「あの…ありがとうね、ちょっと元気なれたよ。」  少し照れながら言うケイの背中をポンポンと叩いた。 「いいって。お前ほんっとにかわいいね、小柄だし細いし、色白だし美人だし。言うこと無いじゃん。もしお前が女だったら確実にホレてるよ。」  冗談半分に笑いながら言うリョウ。 「バカっ」    ケイも笑いながら答えた。
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