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この日のライブも成功に終わった。Zillとしては初めてのツーマンということもあり、新たな課題を見つけることができた日でもあった。
1番手を飾ったZillは今日も新たな客を掴んだ。その新しい客の中には対バン相手のバンドのファンまでいたのだ。
Zillのライブが終わると客の大半は後から出てきたバンドに興味を示さず、気まずい空気が流れていた。2マンなのに、床に座ったままの客も多い。
ライブ自体も、音はいつもより荒れ、MCなども投げやりになって、逆に客に不快感を与えるという結果になってしまった。
Zillの勝利は明らかだ、と誰もが思っていた。
全てのライブが終わり、控え室に戻った4人。
「あーぁ、なんか可哀想なライブ見た気すんなぁ。」
背伸びをしながら言うリョウ。
「あいつら、まず人としての礼儀がなってないねん。あんなん当たり前や。」
タケルはタバコをくわえ、煙を吐き出しながら答えた。
「へっ、お前が言える立場かよっ」
「あ!?なんや文句あるんか」
笑いながら言うアツシに本気でムキになるタケル。こんなやりとりもZillの中では微笑ましいもの。
その横でケイがスッと立ち上がった。
「俺、トイレいこっかなー」
わざとらしく言うケイにタケルは冷たく言い放った。
「いちいち言わんでええからはよ行けや。」
ケイはタケルのいつも通りの冷たい言葉に送られ、トイレに向かった。
――なんでタケルはあぁ冷たいのかなぁ。もう慣れたけど。ちょっとは優しい事言えんのかな。
そんな事を考えながら用を済ませたケイが手を洗っていると、扉が開いて後ろから誰かが来た。
タケル?
ケイが水道の上に付いている鏡を見ると、そこにはタケルではなく、今日の対バン相手の四人の姿が写っていた。
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