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雪のぱらつく12月の冬。
街はクリスマスのネオンで埋め尽くされ、コートを着た人々が白い息を吐きながら通り過ぎる。耳に聴こえてくるはジングルベルのメロディ。
「………さむ………」
キンッ シュボッ
タケルは立ち止まり、ジッポから湧き出した炎でタバコに火をつけるとまた歩き出した。
なんでこんな寒い日に待ち合わせやねん…
めんどくさい、と吐くため息が白く染まる。
――バンドメンバーのアツシからタケルへ電話がかかってきたのはおとつい。いいヴォーカリストがいるから会ってみないか、と言われたのだ。
「いや、いい」
タケルは即答した。その言葉に大声をあげるアツシ。
「いいって何やねん!もうこれが最後、これであかんかったらもう諦めよう。やから、あさって駅前の喫茶店でそいつと待ってるから!絶対来いよ!…ッツ、プーップーッ」
そう言って一方的に電話を切られた。
「…ったく…」
タケルはもうバンドから足を洗おうとしていたのだ。ベーシストのアツシにドラマーのリョウ、そしてギタリストの自分。自分で言うのもおかしな話だが、メンバーの腕は確かだ。楽曲も評判がいい。なのにいつもヴォーカリストに恵まれない。もう何人目だろうか。タケルには焦りもあった。このままバンドを続けるということに不安を感じていたからだ。本気で引退を考え始めていた。
そんな時に来たアツシからの誘い。いい返事など出来るわけがなかった。
少し雪が強くなり始めた。小さく消えていったタバコの火。
「最悪…」
タバコを道に捨ててギュッと腕を抱いた。
やっとのことでたどり着いた喫茶店。寒さで麻痺してしまった手でドアを開ける。カランカランと鳴るドアの鈴。その鈴の音に気づき、こっちを向いて手を振るアツシ。相変わらずの金髪が目立つ。タケルはアツシの向かい側に座り、コーヒーを頼んだ。
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