一学期終業なのだ

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一学期の終業式が終わったあとのホームルームってみんな浮かれちゃってるよね。先生までにっこりしてるしさ。 ところで、エズミという素晴らしい女の子がいるんだよ。彼女は数学が好きでね、素敵だろ?ほら、女の子ってなにかというと英語が好きだから 終業式の帰りにエズミと会う約束をしていた。 エズミの学校(僕の母校でもある)の最寄駅で待ち合わせをしていて、僕は学校を出て駅のホームで電車を待っていた。そしたら後ろからグースさんっていう先輩に声をかけられた。彼は僕の一つ年上で中学が一緒だった。たぶん学年で2番か3番目に頭がよくて、男子校に進学した。もちろん進学校だよ。君が学歴とかそういうのに詳しいなら彼の学校の名前を聞いたことがあると思う。たまに高校生対抗のクイズ番組にも出てる学校だよ。それで僕らは同じ電車に乗った。想定内ではあったけど彼の話はどこか自慢がかってた。 「で、そのカリキュラムを導入するのはうちが初めてでね」 グースさんはたぶん僕のことを気に入ってくれてると思う。僕も中学のころ多少はいい成績をとっていて、彼もなんとなくそのことは知っていたから。だから彼は僕を同類だとみなしてた。 彼が自分の通う高校の自慢ばかりしてるから僕は心の中でさっきエズミにもらったメッセージのことを考えていた。彼女にしてはテンションが高めの文面だったんだ。でもなにかすごい出来事が起こったとかではないんだろう。難しめの数学の問題の解法を思いついたとかそんなことだろうね。 僕が降りる1つ前の駅で乗ってきた子どもがピーキュアのかばんを背負っていた。それってエズミが好きなアニメなんだ。それでまあ、その子が母親にピ-キュアの話をしてるのを見ていた。ピーキュアのパワーアップの秘密とか、変身のセリフとかそんな話だよ。その光景をみてるとなんだかグースさんの話にも面白みがないわけではないと思えてきたんだ。そのとき彼が話してた、彼の高校から推薦で進学した生徒が大学でいい成績をおさめてるおかげで高校に対する信頼が増して推薦枠が増えたとかって話が。 それで、気分が良くなっていた僕は、僕が降りるときに彼が言った「おいおい、まだ乗っていて俺を送ってくれるんだろ?」なんていうジョークにも、彼が期待してた分よりも少し多めに笑っておいたんだ。
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