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何でもないわけではないんだけどね。
食欲が満たされて落ち着くと、昨日壁に叩きつけてしまった本が気になってくる。やっぱり読まなきゃダメなんだろうなって考えると憂鬱になるよ。さすがに床に置きっぱなしではないけど、サイドテーブルに置いたまま放置状態だ。
私のうんざりした顔と、目線の先にあるのものに気づいたサラさんが問いかけてくる。
「あの、不思議な本が気になりますか?」
「え? 不思議って?」
「表紙の模様が、前と変わってます。姫様に関わるものですから神王様から与えられた神具だと思うのですが……」
「確かに神様がくれたものっぽいですけどね。私の母国語が書かれてますから……でも、中身が……」
私の嫌そうな顔を見て、なぜかサラさんが慌てている。
「姫様! 無理に読まなくても良いのですよ! なんとお可哀想な姫様!」
「え? サ、サラさん?」
「故郷の言葉で書かれていれば、思い出してしまいますよね。きっとご家族が恋しいことでしょう……いいのです。傭兵団長のレオ様が来られるまで、しばらく塔でゆっくりと過ごしましょう! サラがずっと姫様のお側に付いておりますから!」
「あ、ありがとう、ございます?」
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