2、詰んだ春姫の話

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 もしこの世界で結婚できていたら、扶養されるという素敵ルートもあっただろうに。なんという悲劇。私はただ毎日を平凡に、好きな漫画を描きながら楽しく生きていたいだけだったのに……。  暗い気持ちになった私は、サイドテーブルにある『チュートリアル』を手に取ってみる。 「まずは、これを読んでみよう。何か分かるかもしれない……よね?」  おそるおそるページをめくる。  そこには、私の予想だにしないことが記されていた。   はじめに。   この本を手に取った貴女は『フィアテルエ』に選ばれた『四季の姫』です。   この世界では神王に選ばれし四人の姫がいます。   彼女たちは季節を変えていく大事な役割を担っています。   その一人が貴女です。   選ばれし『春姫』である貴女であれば、何も難しいことではありません。   では、まずはじめに『春姫』として『騎士』を選びましょう。   貴女の結婚相手になるかもしれない人たちですから、慎重に選んでくださいね。 「結婚相手になるかもって!! 結婚できない詰んだ女が選べないっつーの!!」  叫びながら思わず壁に本を投げつけようとしたけど、いやいや落ち着けもちつけ私とクールダウンする。もしかしたら元の世界に戻る方法があるかもしれないし。   ちなみに、元の世界に戻ることは不可能です。 「コンチクショウ!!」  今度こそ私は本をを壁に投げつけた。
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