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簡単なように見えるけど、最初の頃は失敗ばかりしていた。間違えたら最初からになってしまうので、従者として来てくれた人たちには何時間も待たせたりとか迷惑ばかりかけていた。
「ふぅ、今回は簡単で良かった」
この寒さでどうなることかと思ったけど、なんとか間違えずに弾き終わる。
その瞬間、私の足元からみるみる雪が解けていき、雪の下から見える土にはうっすら緑も生えてきている。
「やったな姫さん! 成功だ!」
「さすが我らの姫!」
「わーい! あたたかくなってきたー!」
喜ぶ「騎士」たちの様子に、私は知らず笑顔を浮かべる。
「ありがとう皆! 来月もよろしくね!」
ここは、人の手によって一年ごとに季節を変える世界。
世界の端、東西南北には4つの塔があり、そこには「姫」と、かの者に従う「騎士」たちがいた。
北は冬、武に長けた姫。
西は秋、楽を愛でる姫。
南は夏、学問を尊ぶ姫。
東は春、姫になった者は皆等しく狂っていくという。
春。
それは、眠るような白い時の終わりにして、鮮やかな生命を生み出す始まりの季節。
花は咲き乱れ、鳥は歌い、すべての生き物が眠りから目覚める季節。
人々が焦がれてやまないその季節の姫は、この世界から選ばれることはない。
異世界召喚。
誰が行うわけでもなく、この世界の神が呼ぶという異世界からの姫。
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