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1、詰んだ私の事情
派遣の契約が完了との連絡が入ったのは、まだ寒い真冬の時期だった。
契約完了ということは、次の仕事を探さなければならない。
仕事が終わっての帰宅途中、スマホのメール画面を見て私はため息を吐く。
「寒い。心も懐も寒い。寒すぎる」
この時期に「一ヶ月後には無職ですよ」という通達はキツイものがある。しかも特に資格などを持っているわけでもない「平々凡々以下」な私では、次の仕事がすぐには見つからないだろう。
「やっぱり、ちゃんと就職するべきだったのかな……」
漫画家になりたいと言ったら家族に大反対され縁を切るとまで言われた私は、高校を卒業するとともに家を飛び出した。
そこからはバイトしながら漫画の原稿を描き、出版社に持ち込んだり投稿したり、寝る間も惜しんでガムシャラに頑張った。
きっと若いから出来たんだろうな。今やれって言われても体がついていかないし、あの生活はもう無理だろう。
バイト生活が苦しくなった時に、友達から高時給な派遣の仕事を紹介してもらってから数年。気がつけば三十代半ば。漫画家になるという「夢」は同人誌を描いたりするくらいの「趣味」になってしまった。
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