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寝ていた私はいつも着ているスエットの上下という格好だ。寝心地の良かった枕の右側には、買った『初心者漫画セット』と少女漫画が転がっている。左を見るとガラスペンと青いインク瓶、
そして模様の描かれた紙が……サラサラと砂になっていく。
「えええ!? ちょっとどうなってんのこれ!!」
慌てて起き上がった私の勘が告げている。この紙が今の状況に陥っている原因だと。
せめて模様だけでも写したかったけど、あっという間に砂になってしまった。インクと同じ青色の砂がシーツの上に残っている。なんてことだ……。
「失礼いたします」
突然響く女性の声に驚いた私が声に返せないでいると、ドアを開ける音とガラガラと何か台車を動かすような音が聞こえる。白い布の向こうが少し透けていて、女性が食器を並べているのが見える。
声をかけたということは、私がいるのは分かっているんだろう。コーンスープみたいな香りもするし、食事の準備は私のためにしてくれているに違いない。ここは勇気を出さねば。
「……あのー」
「ひぃっ!?」
飛び上がって驚いた女性が、慌てたようにしゃがみこむ。このままじゃ失礼だろうと、ベッドに掛かっている天蓋の布を開けようとする私を女性が手伝ってくれる。外国映画に出てきそうな優しい感じの白人女性は、私より十歳は年上のように見えた。
「すみません、あの、ここはどこですか?」
「…………」
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