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プロローグ
真っ白な雪に覆われる森の中。
唐突に現れた黒い大きな箱のような物体を前にした私は、ほぅっと白い息を吐く。
黒い箱のくぼみに指を軽くかけて、そっと手前に引くとそれは椅子になる。そこに座り、机のようになっている場所の下に手を入れて「よいしょ」と気合を入れて上に持ち上げた。
現れたのは、白と黒の鍵盤。持ち上げた蓋の裏には譜面が付いていて、それを元に鍵盤を操作していくのが私の「お仕事」だ。
「姫さん、今回はトチるなよ」
「わ、分かってるわよ!」
揶揄するようなことを囁いてくる外野の声に、思わず強めに返してしまい慌てて口をつぐむ。
いかんいかん。今は儀式の途中なんだから集中しないと。
昔から初見の譜読みは苦手だったのに、まさかここでやる羽目になるとは……と心の中で愚痴を言いながら、寒さでかじかむ手をさする。
ペースはゆっくりにしよう。間違えないように焦らずゆっくりと、だ。
一音目の鍵盤を押すと、置いてある譜面はゆっくりと下に流れていく。あとはその譜面通りに「弾いて」いけばいいだけだ。曲は毎回違う。クラシックのような時もあれば、ジャズのように複雑な音の組み合わせの時もある。
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