一冊の本。

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 次の日、リハビリを終えた私は母と一緒に病室を出る。  本来なら母を送る為だ。    けれど、今日はそれ以外にも。 「それじゃ、私は待ってるね!」 「病室の方が暖かいよ?」 「ううん、ここでいいの」 「そう?なら急いで戻ってくるからね」  母がそう言って歩き出す。それを姿が見えなくなるまで見届けてから、私はまた読書を始める。今日の本は…… 「昨日と同じ本……かな?」  そうだ。昨日もこんな感じで話しかけられて、読むのを中断してしまった本。  そして昨日と同じ声で私は話しかけられた。 「そう言うあなたは高嶋さん?」 「確かに僕は高嶋だけど……それをどこで?」 「看護師さんが言ってましたよ」  なるほど!と言ったように手を叩く彼に対して、私は昨日の続きが気になっていてしょうがなかった。 「その顔はどうやら昨日のことで何か用があるね?」  そしてそのことは彼にもしっかり伝わっていたようだ。 「なぜ、今日も昨日も本が分かったのです?」 「ああ、その事ね!」  彼がそう言って手を差し伸べてくる。  握手かな?と思いその手に私も手を重ねた。少し震えているけど温かい。  すると。 「違う違う!本だよ」     
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