0人が本棚に入れています
本棚に追加
家の前にある枯葉だらけの公園が今朝起きたらフワフワのファーに衣替えをしていた。
本当は今すぐにでもあのファーに飛び込んでみたかったけど、一緒に遊ぶ友達もいないから窓から眺めるだけにした。
結露だらけで見えないくらいに曇る窓に落書きをして、指の先が濡れる。
お母さんからやっちゃいけないって言われてたけど、カーテンに指に付いた水滴を吸わせてる時。
奥からお母さんが僕を呼んだ。
「ちょうど良い素材が撮れそうだし、一緒に公園行こっか!」
......僕はダッシュで着替えを取りに行った。
僕のお母さんはプロのカメラマンをしていて、撮った写真は教科書とか会社の広告とかに使われてるらしい。
そんなわけで公園に着くとお母さんは早速写真を撮り始める。
僕は僕で足元の雪を丸める作業に取り掛かった。
少しずつ雪の塊が大きくなるにつれて、僕の手とたぶん鼻と頬もジンワリと赤味が増していく。
真っ赤な指は感覚が無くなってきたけど、不思議と身体はポカポカと熱い。
二つ目の雪塊を結合させて落ちてた木の枝をサクッサクッと突き刺す。
バケツを忘れて後悔したけど、我ながら良い出来栄えだと思う。
確か英語で雪男って呼ぶんだよって、お母さんが言ってたような気がするのを記憶のどこかで探したけど諦めた。
お母さんは公園の小さな丘の桜の樹の下でまだ写真を撮っていた。
来年になったらあの桜の木もいっぱい桜の花を咲かせるだろう。
その時もお母さんはカメラを持って撮りに行くのだろう。
それでも良い、こうやって一緒に出かけるのが僕は一番好きだなぁって思う。
冷たい空気を大きく吸い込む、一瞬肺がビックリしてせっかく貯めた空気が漏れそうになるのを我慢して。
「お母さん!!見て!!」
口から出た白い雲が丘の上に流れる。
僕の声に気づいたお母さんは少し驚いて、困ったような目で、だけど口元は笑っていて。
そして僕の方に、レンズを向けた。
最初のコメントを投稿しよう!