あかずの踏切り

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あかずの踏切り

そこは、いわゆる、あかずの踏切だ。 ターミナル駅の裏手にあり路線も多い。いったん遮断機がおりると、かるく一時間は通れなくなる。歩道橋もあるが、かなり遠まわりだ。 だから、なるべく踏切があがっているときに渡ろうとする人が多い。 だが、この踏切には、あるウワサがあった。 朝の通勤ラッシュの時間帯、まれに、ほんの数分間だけ遮断機があがる。そのとき踏切を渡ると、死んだ人に会うことができるーーというのである。 亡くなった恋人の姿を見たとか、死んだ両親と言葉をかわしたとか、そんな話を耳にする。 奈苗(ななえ)の会社は、この踏切を渡ったさきにあった。毎朝、必ず通る場所だ。めんどうだが待つと長いので、必ず歩道橋を使うようにしていた。 じつのところは、それ以外にも理由がある。 以前、ちょっと、ここで気味の悪い体験をしたことがあるからだ。まだ、この踏切にまつわるウワサを知らなかったころに、一度だけ、遮断機があがったスキマの五分に渡ったことがある。そのとき、どうにも説明のつかないことがあった。 それからは、たとえ、渡れる瞬間があっても、そこは使わないようにしている。     
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