トラブルとともに

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トラブルとともに

 数日間降り続けた雪がその勢いを一層強め、吹雪に変わり始めた。僕は注意深く、しかし一秒でも早く家に帰れるように速足で雪の積もった道を歩いた。住宅街から離れた河川敷は風を遮る建物がなく、川の冷気を含んだ重い空気が防寒着から出た顔や手の温度を容赦なく奪っていった。手を擦り、カイロで微かな暖をとりながら無心で歩いていると、河川敷に植わっている桜の木の下に人がいることに気がついた。 「君も撮影?」  ファインダーから目を上げた彼女が僕に視線を送っていた。彼女の顔の表情筋は一筋を動いていないが、瞳は好奇心で輝いていた。セーラー服の袖の線やスカートのプリーツの感じから彼女が同じ学校の同学年だということが分かった。 「え。いや、ちがうけど」 「そうなの」  僕の返答に彼女は明らかに落胆していた。僕は彼女の視線が僕の手に注がれていることに気づいた。彼女は僕が手にデジカメを握っていると勘違いしたのだと理解した。 「こんなに寒いのに撮影してるの? どんなの撮れたの? 見せてよ」 「うん」     
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