彼は抹方という

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彼は極端な人だった。物事をするのにもの凄い勢いで動くときもあれば、あたるはずのない懸賞に応募して結果が発表された1年後まで待っていたこともある。そんな彼が唯一適切な時間待つことができたことがあって、それは彼女との時間だ。元々人思いのところがあるからだと思うが、デートの約束の時間には遅れることなく、しかし早すぎず適切な時間に来ていたというし、彼女もそう言っている。彼女との時間を大切に育んだおかげで目出度くゴールインできた。これもまた適切な時間待つことができたことによるものだろう。結婚後子供が生まれた。名前は陽葵(ひまり)といったかな。彼は子供の成長を急がせたり、逆にほったらかしにすることなく待つことができたから子供は元気で教養のある子に育った。有名大学の付属小学校・中学校・高校と進み、大学まで進学した。大学卒業後は公務員として働いたらしい。彼も昔は公務員で働いていたから彼の跡を継いだ感じになるのかな。やがてその子も結婚し、子供ができたらしい。だが...彼は最後の最後で待つことができなかった。孫が生まれる前に悪性中皮腫で亡くなってしまったんだな。亡くなったその日に孫が生まれたらしいから本当に惜しかった。名前は深月(みつき)というらしい。 ここまで紹介したのは彼の待つ人生についてだ。待つ、自発して待てることもあれば中々そうはいかない時もあり、待ってくれないこともある。あなたは、待つ方ですか、待たせる方ですか? 待たせるのは1度や2度なら許してもらえるだろうが、幾度どなく続くようだと、潜在的に溜まるものが溜まっていつか爆発させてしまわないようにな...
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