プロローグ ――ユーロパの門――

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プロローグ ――ユーロパの門――

「もうすぐ御門が……このユーロパの外へ通ずる扉が我々の手に落ちる! 開放の時まであとわずかだ!」  ユーロパ正統教会の大司教であるエスセヴンはその叫びを、監視システムを通して聞いていた。懐かしい声だった。  そうか。やはり君だったのか、デーシックス。  驚きは無い。“開放者”を名乗る彼ら異端の一派が跋扈し始めた時から、既に心のどこかでは覚悟していたのだ。正統教会から御門を奪わんとするあの一派を率いているのが、かつての親友だということを。  そして、デーシックスがそうなるきっかけを作ってしまったのは、他ならぬ自分なのだ。 「エスセヴン猊下! 防衛陣がもうもちません! 相手の数が多過ぎる上に、あいつら、こちらの態勢を崩すために、捕獲した“エイチェス”まで使っています」  切羽詰った様子で、部下が連絡を入れてきた。  分かっている。  分かってはいるのだ。今の戦力で守り切るなど、とうてい不可能だということは。  だが、増援を求めたところで、間に合うはずもない。民衆だけでも、もはや手に負えない数になっているというのに、エイチェスまで使っているとなれば尚更だ。
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