幸せ

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幸せ

 大学に入学しなければ、まともな仕事に就職できない。そう言われて死ぬほど勉強した。好きでもない勉強に何時間も掛けるのは正直苦痛であったが、幸せのためにと自分に言い聞かせて勉強に励んだ。  見事大学に合格したまでは良かった。どうせ仕事するならやりたいことをしようと思っていた。しかし、そのやりたいことをするにあたって必要な企画力が一向に身につかない。単純に自分の性質と企画力の相性が悪かったのだ。結局、大学とは全く関係のない仕事に就職した。  大学の授業料などのために抱え込んだ借金は全然減らないし、生活するのもやっと。それなのに、給料は満足できる量には程遠い。やっとの思いで借金を返済し終え、生活も安定した頃には年齢も40を超えたことろであった。お金にも時間にも余裕なんてなかったため、未だに独身で、彼女すらもいない。  結果、こんなお金のないおじさんを相手してくれる人は現れず、幸せの形もぼんやりしたまま一生を終えた。
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