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〝マンションからは出るな〟
同じような内容のメッセージが二つ届いていた。
送った主は滉と、貴臣だ。
スマートフォンを手に歩く美夕は、湖から渡ってくる迫る冬を教える冷気を含んだ風に首を竦めた。
ミニスカートの足が改めて寒さを実感させた。
ここは、住まいのある街よりも二、三度気温が低いようだ。
寒いけれど。
「兄さん、滉君、言い付け守りません。ごめんなさい」
小さく呟いた美夕は巻いていたマフラーに顔を埋め、湖畔の遊歩道を歩いて行く。
湖の水面には紅葉のグラデーションに染まる美しい山々が鏡のように映っていた。
しかし、寂れた湖畔に人の気配は無い。
美しい紅葉の景色も秋特有の寂しさを演出していた。
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