一晩の友

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 身体が震えて仕方がない。何度さすっても温かくなることはない。暖房器具はなく、防寒着を着こむしかなかった。  家の外に居る仲間が今にも私の背後に忍び寄り、その冷たい息を首元に感じさせるのではないかと思うほど――――そのまま殺されてしまうのではないかと思うほど、私は怯えていた。 「誰か…誰か」  暗い中、無線機までなんとか辿り着く。そして無線の周波数をむちゃくちゃに弄ってみる。  怖い。寒い。暗い。誰かいないのか?祖国に帰りたい。誰か。誰か、誰か…。 「助けてくれ…」  無線機は、何の音も出さない。  私は、もうだめだと思って机に突っ伏した。  たとえこのまま明日になったとしても、あの黒い悪魔の恐怖に打ち勝って空を飛べる勇気は、私にはなかった。  私は、死ぬんだ。誰も知らないまま、罪悪感と恐怖に怯えたまま死ぬしかない。    そんな恐ろしい目にあうくらいなら、自分で終わらせてしまったほうがいいのでは?  そんな卑怯な考えに誘われるがまま、ピストルを手に取った時だった。  ザーっと砂嵐の音を立てるだけだったラジオがざざっと混線する。  ほとんど雑音しかない音の中に、確かにぼんやりと機械ではない音がする。  人の声だ。
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