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航空戦
航路・機体ともに異常なし。天候も良く見晴らしがよい。
私はいざという時にすぐに行動できるように常に辺りに気を配る。
そして、奴が来たのは昼頃だった。
私が雲の中に入り、視界が全て白くなってしばらくして…雲の中から出て視界が白から真っ青になった時、目の前にあの黒い悪魔が私と向かい合う形で飛んでいた。
私に機銃を向けて待ち構えていた。
「あ」
死んだと思った。
生まれてきてから今までの光景がばっと脳裏に浮かんだ。田舎の風景、両親の顔、訓練兵時代の辛い生活、昨日殺された仲間たちの姿…。
そして、その黒い悪魔は私に向かって飛んできて、そのまま猛スピードで私の隣を通り過ぎた。
「…は?」
何が起こったかわからなかった。私は完全に虚を突かれたので、奴は私を撃墜することができたはずだ。なのに、なにもせず私の横を通り過ぎた。
「機体のトラブル…?」
銃弾は発射できなかった。――――野郎、ざまあみろ!
奴はそのまま方向を変えることも無く飛んでいる。不利と見てそのまま逃亡しようとしているのだろう。
「逃がすか!」
私はすぐさま機体を切り返し、奴の後ろを取る。奴は変わらず飛び続けている。
私は機銃のボタンを押した。
私の戦闘機から発射された銃弾は見事に悪魔の黒い鉄の身体を抉り、青い空に真っ赤な爆炎を上げさせた。
悪魔は見るも無残に砕かれた。
私は狭い操縦席の中でエンジン音に負けないほどの雄たけびをあげた。
「やりました!わた、私、は、やりました!仇を、打ちました!!皆の!仇を!あのクソを…ざまあみろ!わたしはやり遂げました!」
もう報告する相手は居なかった。しかし私はこの空に沈んだ仲間たちに向かって高らかに何度も戦果を報告した。
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