1章 FPS少女と片腕の少年

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弱いものが悪く、強いものが正義となるのは現実の戦争とFPSゲームは同じ考えであると彼女は思っている。  だが、先ほどのような状況において、このように軍刀で勝たれるということは、それとは違う意味合いがある。 「私程度、銃を使わなくても勝てるということ!?」  それは侮辱行為と等しい行動だということ。  どんなゲームにおいても初心者というものは存在するが、FPSにも無論存在する。  しかし、FPSではその初心者と上級者の間には越えようとしても決して乗り越えられないほどの壁が存在する。  移動の仕方、武器の癖、戦場マップの熟知、戦術など数多くの知恵が重なり、そこでようやく反応速度というもので勝負が決まってしまうのがFPSだ。決して反応速度が良いからといって、上級者には簡単に勝てるものではない。  普通の勝負であれば、初心者と上級者の勝敗は歴然であるが上級者にしても、それは簡単に勝ってしまってはゲームとしておもしろくない。  そこで上級者が取った行動というのがハンデをわざわざ背負うことだった。それはハンドガンのみで戦ったり、手榴弾のみで戦ったり――軍刀のみで戦うといった行為。 「ちくしょうめぇえぇええ!」  怒りに身を任せ、パソコンが置いてあるマウスを思いっきり壁に叩きつけるとそれが跳ね返り、私の額に見事ヘッドショットを食らわされた。 「い、痛い……」  額を擦りながら、それをやったことに後悔する。 「ああ、なんてことしている私! これ高いのにぃい!」  急いでマウスの安否を確認しようしたが、マウスボタンがクリックされたのだろうか、LOSEと出ていた画面から別の場面へと切り替わっていた。 「いや、まだだ……まだ勝利の可能性は残っている」  気を取り直して、床に落ちていたマウスを再びデスクの上に戻す。  普通なら負けてしまえば、それで終わりというのは常識だ。だが例外が一つだけ存在する。 「こいつはもしかしてチーターかもしれない」  そう、相手がチートという改造行為をしているのではないかということだ。
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