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時間――不明
場所――不明
薄暗い森林。
地面には獣も通らないほどの背の高い草むら。
それが少しだけ揺れると迷彩柄の服を着た少女が顔を出した。
彼女は決して頭は動かさずに、目線だけで辺りを見回し、音をよく聞くために集中した。
この辺りには何の種類かも分からないような鳥らしき鳴き声だけが聞こえている。
「まだだ……」
その鳴き声がまるで、早く立てと命ずるかのように急かしているような錯覚を少女は覚えた。
そうはさせまいと自答しながら、今にも飛び出しそうな身体を無理やり地面に押さえつける。
「ん……?」
突然、何かの違和感があった。すぐ近くの草木が揺れたように見えたのだ。
「まだまだ……」
焦らぬよう、慎重にその草木の方向へと匍匐して近寄る。
「近いな」
地面に耳を置きと足音がかすかに聞こえてくる。おそらく、ソレは慎重にこちらを近寄っているのだろう。
しばらく、その状態でいると先にソレは姿を曝け出した。
「敵」
間違いない――敵だ。
地味な緑色の軍服の男。
手には敵の武器エモノであるアブトマット・カラシニコバ-74、通称AK-74を構え、ゆっくりと一歩一歩足を踏み出し歩いている。
少女が着ている物のように兵士たちの服は迷彩柄や緑の物が多い。そうなると、現在いる草木が多い森の中ではその効果は十分発揮してしまう。ゆっくりと歩けばそのステルス性は確実なもので、なおかつ目を慎重にこらしながら索敵をしている。
「でも、そこまでは二流のすること」
息を殺し、微動だしない少女の傍を男が通り過ぎる。
「今だ――!」
完全に男の視界から少女が見えない位置に動くのと同時に起き上がり、腰のホルダーに差しているナイフを抜いた。
ゆっくり即座に男に近寄ると、後ろ首に腕を回すようにつかむ。
急いで男は抵抗しようと手足をバタつかせ銃の引き金を引き、弾丸が乱射されていくが、少女はお構いなしと冷静にナイフを心臓へと突き刺した。
数発の銃声が響き終わると、男はビクビクと痙攣したかのように動くが、次第にその動きも段々と小さくなり、ついには止まったことを確認する。
少女は男からナイフを抜き、亡骸を静かにその場で横に倒した。
「さて一人キル。残りは三人か……」
彼女が持っていた情報からはすでに残りの人数が分かっていた。
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