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その亡骸から離れ、この森の中で少し大きめな木の幹に身体を隠す。
おそらくだが、あの男は他の敵と連絡を取り合っていた可能性がある。突然、連絡が無くなった疑問と数発の銃声でこちらに敵が近づいてくるかもしれない。
その答えはすぐに分かり、先ほどとは気配を隠さずにうるさいぐらいの複数の足音が聞こえてきたからだ。
「普通はこっそりと来るもんなんだけどね……まあ仕方ないか、もう私しかいないし」
実は彼女には仲間だった部隊数名がいたが、少女を残して全滅をしており、敵もそのことが伝わっていた。
「それにしても、さすがに慢心しすぎでしょ……勝敗は最後まで分からないというのに」
ここまで来るとあちらの余裕ぶりに少々の怒りを覚える。
だが、今は戦闘中であり、冷静さを保つためにその怒りを抑えつけると、木の幹から近くの木の幹へと移動する。
すぐに先ほど少女がいた場所に二人の兵士の姿が現れていた。
確かに二対一という状況であれば、心にも余裕が出てくるのであろう。普通に考えれば数の差には絶対に勝てない。だが、向こうには気づかれていないのに、こちらが気づいているという状況であれば話は別だ。
「三流ね……」
少女は敵にバレないよう心の中でつぶやいた。
「おい、やられた一人だ。敵はやはりこの近くにいるぞ」
敵の一人がどうやら先ほど殺した男の亡骸を見つけたようだ。お陰で、先ほどよりは警戒という物が敵の方にも出て来たようで二人は散開し、バラバラに索敵を開始した。
このまま待って、先ほど同じように一人になったところを狙えば勝てるのだろうが、少女は考えながら腕時計を見て、時間を確認した。
彼女にはある目的を時間以内に果たさなければならないミッションがあったのだ。
『時間がないわね』
この時計は時刻では無く、残り作戦遂行時間のカウントダウンを知らせるものだ。
任務の内容は小型コンテナを時限爆弾で爆破させるというミッションだ。
もちろん他の部隊員も同じ目的だったが、対抗勢力によってそれを阻止されていってしまった。
彼女はなんとしてでも、ミッションを遂行させる必要があり、このまま作戦遂行時間を過ぎてくだらない失敗はしたくない。
この状況を打破するため、一つの賭けに出てみることにした。
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