序章 これが私の戦場

4/7
前へ
/14ページ
次へ
少女は自らの手にあるライフルをぐっと握りしめる。 「行くわよ……相棒!」  彼女の相棒【M4A1】。M4カービンにはセミオート(単発)と3点バースト機構を持つが、それを改良しバーストをフルオートつまり連射が出来るようにした形態、それが彼女の相棒エモノだ。  少女はトリガーに軽く指を乗せて引く。セミオート状態で発射された弾は敵ではなく、その敵より先にある木へと命中した。  フルバースト状態であのまま敵へと撃ち込めば、一人殺せたとしても散開した後一人に居場所が突き詰められる。ならば、こちらで散開した二人を一カ所に誘導させる必要があったのだ。 「そう、そのまま……」 思惑通り、命中した木は弾を受けた振動によって少しだが揺れ出して、葉が下に落ちていった。  まるで、その木の裏側に誰かがいるような錯覚をさせる動きのように見え、それを見た兵士二人は徐々に近づき、今まさに攻撃しようとしていた。 「よし、一斉にやるぞ……」 「了解……」 敵が慎重に攻撃開始の合図を待ち、木の後ろへと回ろうとしている。 少女はまた手にある相棒の様子を確認する。 M4A1にはピカニティー・レールと呼ばれ、オプションを取り付ける台があるので多彩な装備を可能にしている。  相棒に取り付けているのは照準器に光学ダットサイト。  そして、銃身下には【M203グレネードランチャー】が搭載されている。  少女はグレネードランチャーに手を添えると兵士二人に向けて引き金を引いた。 「まとめて吹っ飛べ! おらぁあ!」  ポンという軽い音が鳴ると共にグレネードランチャーの口から発射された物体は兵士たちが集まっていた木に当たった瞬間に破裂し、すさまじい爆発が起こった。  一瞬、少女が目を瞑った後、先ほどまでいた二人の兵士が黒焦げとなって倒れている。 「っ……」 その光景を目の当たりにし、少女は信じられないような高揚感を覚えて両腕を抑えた。  こうなることを狙っていた。 わざわざ遠目の木に狙い付け誘導したのはグレネードランチャーの爆破可能距離を稼ぐ為だ。 このグレネードランチャーには飛距離が短い場合だと自らを爆発に巻き込む恐れがある為、安全装置が発動し爆発しない。  なので、どうしてもこの爆発でダブルキルという向こうにとって屈辱的な与え方をするには敵との間合いを考えながらやっていたのだ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加