1章 FPS少女と片腕の少年

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時間――0時50分  場所――日本 「は、はぁああああああ!?」   私はパソコンのキーボードを叩きながら奇声を発した。  その奇声の原因は前にあるパソコンの画面に大きくLOSEと書かれた文字が表示されていたことだ。  私が今現在しているのは世界中でプレイしていると言われる大人気のファーストパーソンシューティング、通称FPSゲーム。  その中でも一際人気なのがこのコマンダーオブザクロス、略してコマクロとも呼ばれているものだ。  最もこれは日本人だけの呼び方であり、一般的には英語の【Commander of the Cross】のスペルを取って、COCシーオーシーと表記される事の方が多い。  私こと、日可部ひかべ優理ゆうりもこのゲームのプレイヤーだ。  数多くの勝利数とキルデス比率、つまり殺した数が死んだ数より多い比率が圧倒的に高かったことから周りからプレイヤーの中でも相当な腕前と言われ、女性キャラで戦場を暴れまわる姿からか戦火の皇女ウォー・プリンセスとまで呼ばれている。  今しがた、その私が遊んでいたものはサーチ&デストロイと言い、ランダムで集まったプレイヤーたちが即座に2チームに分かれ、敵を殲滅するか、爆弾持っている者は二つある目標物のどちらかを爆破し、持っていない者は解除するというもので勝敗が決まるゲームルールだ。  このルールで私が所属したチームは敗北することなく連勝記録を更新中だったが、先ほどでその記録もストップされることとなった。 だが、さすがに私自身いつか連勝記録は止まるものだと思っていたが、今回の戦闘で最後に戦った相手が普通のプレイヤーならば、まだ納得していたはずだ。 「うぎゃぁああああ!」  私が叫び、着けていたヘッドフォンを乱暴に外して長い黒髪を手でワシャワシャと掻き乱すのは初めての経験だった。  一体何が起こったのだろうか。その答えは認めたくないが、すぐに理解した。 「私……負けたんだ」  上を向き、一体何がいけなかったのだろうかと思い当たる節を探る。 「味方が開幕に全滅をしたこと? 武器の選択? 敵に目もくれず、すぐに対象を爆破しに行けば良かった? 作戦時間の配分ミス? 違う……そんなんじゃない!」  全てある一人のプレイヤーのせい。
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