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そこにあるのは
音楽室の歌声に混ざって足下の教室から先生の声が聞こえる。
「先日の……に続いて、……も去ることになって」「……は国連宇宙ステーションだったが、……は国連シェルターに避難するために」
まばらな拍手があった後、ガタガタと椅子の音が響いて、教室を出たのだろう。しばらくすると先生と並んだ一人の生徒を先頭に、二十人ほどがぞろぞろと校門の前へ向かう姿が見えた。
夏休みが終わってから十日、お別れするのはこれで二人目。前からわかっていた二人なのだから、こんな形ばかりのお別れ会はまとめてやった方がいいに決まってるのに。私はそんなのしてもらいたくないからいいんだけど。
「ゆうだったら泣き真似くらいしてほしい?」
隣に腰掛けるあずが私の心を読んだかのように言うので、「どうだろう」と返す。これは本当にわからなかったからで、でも深く考えてほしいわけでもないのはわかっているし、それ以上は続けなかった。
多分、彼女たちが得意とするままに、いつもの調子で少し大げさに嘆いてみたり、作り物のノリで送り出してあげればいいはず。なのに、女子高生にしては神妙というか、むしろぼさっと立っているだけにしか見えない。
とはいえ、去っていく方も自分だけが幸運を掴んだのが居心地悪く、ひっそりと消え去るのみという心境でしょ。
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