【与えられたモノ】

3/14
前へ
/22ページ
次へ
 私は『人形』――所詮は人の手によって造られた物だ。それだけは決して変わることのない事実だ。  だから私の身体は動くことはなく。  主様が作業をしているそのお姿を、ガラスケースの中の姉妹達同様に、ただただ眺めているだけしか出来ない。  ……何とも言えない気持ちだ。  これも、『心』を持ったからだろうか。  だから、私は度々思う――私が、もし『人形』ではなく『人間』であったのならば、と。  もしそうだったら、私は主様の肌に触ることが出来るし、主様に見てもらえる。話しかけてもらえる。喜んでもらえる。  ……いや、主様は私達『人形』に度々話しかけてくれる。 『うん、よく出来ているな』――とか。 『今日も綺麗だな』――とか。 『気のせいかな……』――とか。  しわが目立つそのお顔で微笑みながら私達『人形』に話しかけてくれる。  人間の中ではそのような行為はおかしいのだ、と主様以外の人間から聞いたことがある。  ……なにがおかしいものか。主様は私達のことを想ってくれているのだから、話しかけてくれるのだ。  私が主様を想うように――主様も、私達のことを。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加