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私は『人形』――所詮は人の手によって造られた物だ。それだけは決して変わることのない事実だ。
だから私の身体は動くことはなく。
主様が作業をしているそのお姿を、ガラスケースの中の姉妹達同様に、ただただ眺めているだけしか出来ない。
……何とも言えない気持ちだ。
これも、『心』を持ったからだろうか。
だから、私は度々思う――私が、もし『人形』ではなく『人間』であったのならば、と。
もしそうだったら、私は主様の肌に触ることが出来るし、主様に見てもらえる。話しかけてもらえる。喜んでもらえる。
……いや、主様は私達『人形』に度々話しかけてくれる。
『うん、よく出来ているな』――とか。
『今日も綺麗だな』――とか。
『気のせいかな……』――とか。
しわが目立つそのお顔で微笑みながら私達『人形』に話しかけてくれる。
人間の中ではそのような行為はおかしいのだ、と主様以外の人間から聞いたことがある。
……なにがおかしいものか。主様は私達のことを想ってくれているのだから、話しかけてくれるのだ。
私が主様を想うように――主様も、私達のことを。
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