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「ん?稔(みのる)くんじゃん。今帰り?」
寒くなりはじめた十一月。俺は、……昔風に言おうか。僕は学校から帰宅中だった。
小学二年生の僕は、少し前に誕生日を迎えて八歳になったばかり。誕生日プレゼントは……なにをもらったのか正直覚えていない。そのあとの出来事のほうがずっと大きな出来事だったから。
帰宅中の通学路で出会ったのは、知り合いのお姉さんの侑(いく)さん。あまり家は近くないし年齢も離れていたからあまり会う機会は多くなかった。
それでも僕にとって、あまり『遠いひと』ではない。僕は当たり前のように答える。
「うん。今日は先生がテストの採点とかで早く終わったんだ」
僕は嬉しくなってしまう。学校は早く終わったのに友達が今日に限ってみんな都合が悪いなんて言うものだから、寂しく一人、家でゲームでもしようかなんて思ってたところだったから。そんなときに侑さんに会えたなんて。
侑さんは高校三年生。僕のちょうど十歳上。僕にとってはそりゃあもう立派な大人だ。未成年なのはわかっていたけれど、僕よりずっと大人に近い存在であることに変わりはない。
「そうなんだ。いーなぁ、小学生は」
僕の答えに侑さんは羨ましそうに顔を崩した。こういう顔をするとなんだか子供みたいだ。長く伸ばした髪も、お化粧している綺麗な顔も(でもこれはコーソクイハンって言ってたけど)大人そのものなのに。
そんな侑さんが、僕にとって近い存在である理由。それは実に単純な理由で、僕のお姉ちゃん……血の繋がった本当のお姉ちゃんだよ。お姉ちゃんの友達なんだ。
友達だった、のほうが正しいかな?お姉ちゃんと侑さんが小学生や中学生の頃はよく遊んでたけど、最近は遊んでないみたいだから。
喧嘩とかじゃないと思うけど、高校で学校が離れたからかな。そのへんはよくわからない。
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