1章

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「侑さんは?早く終わったの?」 セーラー服にあたたかそうな茶色のセーターを合わせ、通学バッグを肩に引っ掛けている侑さんは、見るからに学校帰り。よって僕はそう聞いた。 「んー、アタシはサボり」 え、サボり?学校をサボったってこと? 侑さんの答えに僕はびっくりしてしまう。 そして同時に感動した。 カッコいい。 学校をサボるなんて大変な不良だけど、勇敢なことすぎて小学生男子の僕には輝いて見えた。 「なに、その顔。言っとくけど普段は真面目に授業受けてんだからね」 じとっとした目で僕を見てきたけど、それすら僕にはカッコよく見えた。 そして侑さんは、不意に僕の腕を掴んだ。僕がどきりとする間もなくずんずん歩き出す。 「折角だから共犯者になってもらうよ。買い食いしよ」 買い食い!? 僕は再び驚いてしまう。 学校帰りになにか食べるなんて、やっぱり不良だ。お母さんに知れたら雷が落ちるだろう。 でも僕は侑さんに掴まれた腕を払おうとは思わなかった。 共犯者、という言葉の響きがあまりに魅力的だったから。 僕も不良になってもいい、と思った。侑さんみたいなカッコいいことをしてみたい。
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