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そこで侑さんが買ってくれたのは、ほこほこの肉まんだった。
僕は当たり前のようにお財布なんて持っていなかった。学校にはお金を持っていったらいけないことになってるから。
だから「お金持ってきてないよ」と言ったのだけど、侑さんも昔同じ小学校に通っていたんだから知ってたんだろうな。「仕方ないなぁ。ひとつ貸しだからね」なんて侑さんは心底楽しそうに笑っていた。
公園のベンチでかぶりついた肉まんは最高においしかった。ほかほかで、お肉たっぷりで、お肉の汁がこぼれそう。
「んー、罪の味は最高だわ」
侑さんはそんなことを言って、豪快に肉まんを頬張る。綺麗な見た目なのに、侑さんはすることが大胆だ。
なるほど、こういうのが罪の味っていうのか。僕の辞書に言葉がひとつ増えた。
「共犯者って、ハンザイシャ?」
食べながら僕は聞いたのだけど、それは笑い飛ばされた。
「サボりひとつで大げさな」
「でも怒られるでしょ」
「なにを、逮捕されるわけでもあるまいに」
そんなことはいくら八歳の僕でもわかっていたけれど、なんだか胸の中に熱いものが沸いてきた。
これはチャンスだ。僕は勢いよく言った。
「侑さんが捕まりそうになったら僕が守るからね!」
「……はっ?」
真剣に、しかも重大なことを言ったのに侑さんは目を丸くした。ぱっちりした大きな目。
しかしすぐにその目はきゅっと細められた。どこか不満げに。
「肉まんひとつも買えない分際で、生意気」
「いたっ」
僕のおでこが軽く弾かれた。僕は顔をしかめてそこをさする。
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