狂月

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酸素を求め、軽く開かれた彼女の口内に、ゆっくりと舌先を侵入させる。 この時になっても抵抗はなく、寧ろ求めるかの様に、自ら舌を絡めてくる桜子。 これが許された、合意の上の行為なのだと思うと、理性なんてモノは一瞬の内に消し飛ばされそうになる。 あまりにも激しい口付けに、彼女は全身の力が抜け、すがり付く様にして俺のシャツを掴んだ。 実際俺は、飢えていたんだと思う。 これまでの飢餓感を補うみたいに、ガツガツと、貪るみたいに彼女の口内を犯す。 義理の姉だとか、両親が知ったらどう思うか、だとか。 そんなのはもう、どうでもよかった。 ずっと求めていた、たった一人の、大切な女性。 それが今、腕の中にいる。 しばらくその柔らかな感触を楽しみ、堪能すると、唇を離し、そっと見下ろした。 彼女のぽってりとした唇は、どちらのモノかわからない唾液に濡れ、隠避な光を放っている。 はぁはぁと呼吸を乱すその様は、酷く淫らで。 無意識の内に、ごくりと喉が鳴るのを感じた。 彼女の小さな体を、強く抱き締める。 力なく、細い腕がまた背中に回される。 「ごめん、桜子。  でももう俺も、限界なんだ。  ...やっぱり、我慢出来ない。」 「...満月ってさ、人を狂わせるらしいね。  犯罪とか、増えるっていうし。」 これはきっと、彼女なりの言い訳。 でもそれを合意の言葉として受け取り、俺はそのまま彼女の事を、お姫様みたいにして抱きかかえた。 「いいよ、桜子。  そういう事に、しておいてあげる。」 ...今日のところは、ね。 でもきっと、ちゃんと認めさせるから。 桜子も俺の事を、好きだって。 こんな事を口にしようものなら絶対に、彼女は脱兎の如く逃げ出すに違いない。 だからその言葉は、自身の心の内に留めた。 クスリと笑い、優しく額にキスを落とす。 桜子は少し不満そうに唇を尖らせたけれど、そのまま俺は床に彼女を下ろし、上からのし掛かるみたいにして抱き締めた。
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