狂月

4/5
146人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
言葉とは裏腹にベッドへ優しく押し倒すと、もう一度彼女に覆い被さった。 そっと、彼女の胸に手を伸ばす。 決して大きいとは言えないその膨らみに、かつてない程心が、体が揺さぶられた。 風呂上がりらしく、石鹸香りのするの彼女は、タンクトップの下に何も身に付けてはいなかった。 「...ったく、下着くらいつけとけよ。」 軽く胸の先に触れ、指先で優しく転がす。 桜子は甘い吐息を漏らしながら、唇を尖らせて言った。 「だって、仕方ないじゃん。  今日は家に、自分だけだと思ってたんだもん。  ...ちなみに下も、普通のやつだよ。」 余りにもずぼらな、彼女らしい発言。 「そうなの?...どれどれ、確認してやろう。」 ニヤリと笑い、ショートパンツに手を掛ける。 すると流石に恥ずかしくなったのか、彼女は俺の手を押さえ、自分で脱がせろと訴えた。 でもそんな可愛らしいお願い、聞いてやれる筈がない。 焦らすみたいに、ゆっくり脱がせていく。 彼女の顔は茹で蛸の様に赤く染まり、そしてついに堪えきれなくなったのか、かたく瞳を閉じた。 そして現れたのは、レースに包まれた愛らしいピンクのショーツ。 「...なんだ、可愛いじゃん。」 思わず、笑みが溢れた。 桜子は自身の顔を両手で覆い隠し、言った。 「でも、色気ないでしょ?  もっとセクシーなのも、持ってるのに。」   「うーん。俺はこういうの、好きだけどね。  じゃあそれは、次のお楽しみって事にしておくよ。」 手を掴み、顔を出させると、額や頬、鼻の頭、そして唇へとキスの雨を降らせた。 「なんか、手慣れてない?...ムカつくんだけど。」 彼女の大きな瞳が、俺を睨み付ける。 「手慣れては、ないよ。  でもまぁ、初めてでもないから。」 ...軽く、首筋に噛み付かれた。 でも彼女も俺同様、焼き餅を妬いてくれるのだと思うと、少し嬉しかった。 そして我慢が出来なくなった俺はタンクトップを少し乱暴に捲り上げ、洋服を着るとギリギリ隠れる場所にキスマークをつけた。 まるで自分の所有物である事の証のように、いくつも、いくつも。 「好きだよ、桜子...。」 優しく頭を撫でながら、言った。 「うん、知ってる。」 にっ、と大きな口を空け、また彼女は笑った。 「...普通さぁ、そこは、『私も。』とか言うところじゃない?」 胸の頂にチロチロと舌を這わせ、軽く歯を立てる。 彼女は小さく震え、その顔からは笑顔が消えた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!