義姉

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「ただいまー。」 金曜の、夜の八時過ぎ。 仕事の関係で近くまで来たから、約一ヶ月ぶりに実家へ帰省した。 事前連絡なくふらりと立ち寄ったせいか、玄関の鍵が掛かっていたし、返事も無い。 「なんだよ、誰も居ないのかよ...。」 リビングのドアを開き、中へ入ると、電気の付いていない部屋の明かりを、手探りでつけた。 ネクタイを緩めながら、ふとソファーに目をやるとそこには、タンクトップにショートパンツなんていう格好で大口を開けて眠る、小柄な女の姿。 「うぉっ、ビビったぁっ!!  ったく、相変わらずだらしねぇなぁ...。  風邪引くぞ。」 居ないと思っていた人間の存在に、思わず声を上げた。 すると彼女はビクッと飛び上がり、寝惚け眼で俺を見上げた。 「んぁ...?」 間抜け面のまま、知性の欠片も感じられない、言葉にもならない声を発した。 大きいけれど、人よりちょっと離れている瞳。 分厚く、大きな唇。 高いとは言い難い、ほんの少しだけ上を向いている鼻。 真っ黒なショートカットは伸びかけで、お風呂上がりなのであろう今は、少し目に掛かってしまっている。 身長は彼女は150センチだと言い張っているが、恐らくそれには2センチ程満たないんじゃないだろうか、と思われる。 そして、この女。 性格も、決していいとは言えない。 意地が悪く、口も悪く、天の邪鬼で我が儘で。 ...うん。悪いところを挙げれば、キリがない。 この残念過ぎる人が俺の義理の姉であり、長年の想い人...桜子(さくらこ)だ。
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