145人が本棚に入れています
本棚に追加
色気の欠片もないその仕草に心底げんなりしながら、答えた。
「あぁ、急だったもんな。
いいよ、適当にあるもん食べるから。」
俺の言葉に、桜子はキラーンと瞳を輝かせる。
「何、桜子。
....お前、まだ食べてないの?」
呆れながら、聞いた。
「うん。作るのも買いに行くのも、面倒だったんだもん。
作るなら、私の分もよろしくぅ!」
にっ、と桜子は、笑った。
本当にどれだけズボラなんだと、我が義姉ながら情けなくなる。
「...ホント、どうしようもないな。
分かったよ。パスタとラーメン、どっちがいい?」
備蓄された食材の山から発掘した二つの食材を手に、聞いた。
俺の問いに彼女は少し悩み、それから答えた。
「じゃあ、炒飯でっ!」
「...はぁっ!?
パスタかラーメンって、俺、言ったよなっ!?」
余りにも理不尽なリクエストに、つい大声を上げた。
でも桜子は笑顔のまま、言った。
「だってぇ...。
悟の作る炒飯、超美味しいんだもん。
ね、おねがーいっ!」
くそっ。
俺が桜子のお願いを断れないのを知っていて、コイツは。
冷凍庫の中を、ガサガサと漁る。
そこにはカチカチに凍ったご飯が、ちょうど二人分。
冷蔵室には卵も、ブロック状のベーコンも、葱もある。
「...用意するから、待ってて。」
ホント、つくづく俺ってヤツは。
そんな俺を見て、桜子は満面の笑みを浮かべ、わーいと子供みたいに言って万歳をした。
まるで西遊記の話に出てくる、お釈迦様と孫悟空みたいな関係。
いつだって俺は桜子の、掌の上。
どれだけ遠くまで逃げたつもりでも、一瞬の内に連れ戻されてしまう。
...まぁでも、ビジュアル的には桜子の方が、悟空っぽい気がするけれど。
金斗雲に乗る桜子の姿を想像して、思わず吹き出した。
そんな俺を見て、桜子は不思議そうに首を傾げた。
「炒飯、炒飯っ♪」
歌うみたいに言いながら、嬉しそうにソワソワと、俺の背後を歩き回る桜子。
「...そんなに腹減ってたなら、なんか自分で作れば良かったのに。
台所狭いんだから、うろちょろすんなよ。」
すると彼女はにんまりと笑い、言った。
「悟が作る炒飯だから、食べたいんだよ。」
その言葉に、自然と口元が緩む。
しかし続く彼女の言葉に、一瞬の内にそんなのは引っ込んだ。
「だから早く、作ってよっ!お腹空いたっ!」
最初のコメントを投稿しよう!