ベンチの真ん中

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 そして、世間の不平等さなどに腹を立てたい時は真ん中に。  一日座って人様と同じ気持ちを募らせた。そして最近は…真ん中以外には座らない。  真面目に生きてきたんだ。俺がこんな状況に置かれているのは理不尽なことなんだ。  みんなだって少なからず、自分は不平等な立場にいると思ってるだろ? 俺には判るよ。毎日みんなの気持ちが流れ込んでくるから。  こんな世界は嫌だよな。なくなっちゃえって思うよな。  でも何の力もない俺が世界をなくすのは物理的に無理だから、俺は俺の方をこの世界から消そうと思う。ただその前に、俺をここまで理不尽な状況に追い詰めた奴だけは、先にこの世界から消しておこうと決めたけれど。  リストラの時、俺に頼る相手がいないって理由で、俺を会社から追い出した上司。そうなるよう水面下で仕向けた同僚。  まずはあいつらを消して、少しはこの世を住みやすくしてから俺も消えよう。  ベンチの真ん中で、縁もゆかりもない人達の世界に対する恨みを感じる。それを原動力にして、俺は少しだけこの世のためになることをして消えるよ。  さあ、まずはあいつらを消す道具を用意しよう。ナイフとか包丁とか…近くのホームセンターで普通に買えるよな。  あちこちから、こんな呪われた世界を少しでも浄化しろ。頑張れよって声が聞こえる。それに励まされながら、俺はベンチのど真ん中からゆっくりと立ち上がった。 ベンチの真ん中…完
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