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わたしは途中で数えるのを止めてしまうことに躊躇はしたものの、おねーさんを待たせるわけにもいかないのでスタスタと近寄っていってマグカップを受け取った。
夏の夜だというのに、ちょっと肌寒かったわたしにとってはとても有り難いココアだった。
フーフーしながら、口をつけてみると、いつも家で飲むココアよりも甘くて美味しい気がした。
「こらこら、そんなに急いで飲んだら火傷しちゃうよ」
別にわたしはそんなつもりはなかったのだけど、おねーさんに言われていつの間にか自分が半分も飲み干していたことに気がついた。
このときわたしは、このココアを飲んでしまうとお母さんとお父さんのいるテントへ帰らないといけないような気がして、名残惜しくもマグカップから口を離した。
もっとおねーさんとお話がしたい。
すると、わたしの目に移ったのは、おねーさんの前に設置されている白い筒みたいなものだった。
お父さんがカメラを取るとき使用する三脚の上に、細長いものが設置されている。
「……あー、この子に興味があるなら、ちょっと覗いてみるかい?」
「これは、なに?」
「そっか、望遠鏡をみるのは初めてなんだ」
「ぼーえんきょう?」
「そうだよ、これで空を見上げたら、星に近づくことができるんだよ」
「じゃあやる! 近くにいったらわたし、お星さまと仲良くなりたい!」
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