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第四章 階段を降りたら
あの後みんなは何事もなかったように、私に話しかけてきた。
あや(アヤッチの本名)でさえ、普通に話しかけてきた。
なんだったんだろう?あや...
私なんか悪いことした?みんなだって悪口言ってたくせに!なんで私が全部悪いの?佐々木もなんで私だけを?
あやはなんで味方してくれなかったの...?
考えているうちに涙が溢れてきそうになって、必死でこらえる。そして、わざと足音を強くたてて塾ヘの道を急いだ。
あ...。
漫画コンテストの前日、あやの言ってた言葉を思い出す。
『え?これ亜香里が描いたの?信じらんない!』
そして、今日の漫画を見てつまらなそうにしていた顔を思い出した。
私の漫画...もしかして、興味なかったの...?
涙がこらえきれず、溢れだした。
同時に私は走り出す。
もしかして、あの褒め言葉も全部嘘?
塾に着いた時には涙もおさまっていた。
ふと、青木の行方不明事件のことを思い出す。
そういえば、放課後、先生何か言ってたな。
確か、青木はピアノ教室に行った後行方不明になったらしい。つまり、事件は帰り道にあるということだ。その日、防犯カメラは同じ時間に壊れてしまっていたそうだ。なんとも、不気味な話だ。
塾が終わり階段を降りる。
ここのエレベーターは来るのが遅いからだ。
今ははやく帰って、おもいっきり泣きたい気分。
その時、妙なことに気づいた。
人がいない。
エレベーターが遅く、人が多いので、階段には多くの人がいるはずだ。
でも...いつもの風景だから、偶然人がいないのだろう。
なんだか、いつも混んでいる階段を独り占めした気分で楽しくなってきた。
どんどん、階段を降りていく。
あれ...進まない。
進んでいるのに、そんな感覚が私を襲った。
私が後ろを振り向くと、そこには...
「階段がない!」私は思わず叫んだ。
そこには階段ではなくどこまでも続く廊下が広がっていた。上にはもう行けない。下に降りるしかない。
急いで、階段を降りて行く。
一階まで来たとき、出口がないのに気づいた。
「うそ...」
その代わりにマイナス一階というのがあった。後ろを振り向くと、やはり暗い廊下が広がっている。
私はとにかく、下に降りることにした。
「助けて助けて」届くはずのない声。
その時視界がゆがみ、私は足を踏み外した。
ゴンッ!暗くなる視界に意識は消えていった。
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