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第五章 フェワー
意識を取り戻したとたん、頭に激痛が走った。
痛い。なんで?記憶が曖昧でよく分からない。
「えーっと、ここは...」目を開けるとそこは.....。
「なに、ここ」
部屋だった。でも違う。壁が丸い...それにどうみても、壁は木でできている。そっとさわってみる。
本物の木だ。記憶がハッキリしてくるにつれ、いろんなものが見えてきた。まず、私はベッドに寝ていることがわかった。毛布は何でできているのかわからない。シルクかな?そんなことを思いながら、上を見ると、茶色い天井があった。ここはどこなんだろう?えっとたしか、塾の階段で転んで...
「目が覚めた?!」突然の声にびっくりする。私は急いで、声の主を探した。私の隣に女の子が立っていた。さっきまで誰もいなかったのに。
「怖がらないで!敵じゃないわ!」その女の子の目は青色で、きれいだった。顔立ちも美人で、声も透き通ってた。
「あなたは?」
「ルアよ、よろしく。」
「ここは...」
「ここは、フェワーという国よ。安心して、すぐ人間の世界へ戻してあげるわ!」
「じゃあここは異世界?!」私は思わず、叫んでしまった。
「しーっ!バレたら大変なの!」ルアは慌てて言った。
「ごめん...バレるって誰に?ここにいたらダメなの?」
「別にダメって訳でもなくて...」
その曖昧な答えにもっと聞こうとすると、
「ねえ!スターティー飲む?」ルアの楽しそうな声に、それ以上聞くの一旦をやめた。
「スターティーって何?」今はまず、状況を整理したい。
「私の大好きなお茶よ、見てみればわかるわ!」ルアは、私がいる場所から少し離れた場所にある、おそらくキッチンであろう場所で足を止めた。ルアはなれた手つきで『スターティー』の準備を始めた。
改めて周りを見渡すと、私の中に不思議な感情が芽生えてきた。
『懐かしい』。
「はい、出来た!」ルアがお盆に二つのコップを乗せながら、こっちに向かってきた。
私は、少し頭を下げながらコップを受け取った。
「えっ.....」私はコップの中を見たとたん、固まってしまった。そこには星空が広がっていたのだ。ルアは私の反応を見てクスクス笑っていた。まるで、予想通りって感じで。
「ハハハッ、おっかしい」そう言いながらルアは私の横で笑いはじめた。
「何がおかしいの?」私が少し不機嫌そうに言うと、ごめんごめんと言いながら笑うのをやめた。
「スターティーは結構レアなのよ」そう言いながら、ルアはひとくちスターティーを飲んだ。
「この星...何で星空が水面に映ってるの??」私がそう聞くと、ルアは「映ってるんじゃなくて、この飲み物全体に星があるの」と言った。私は、もう一度コップの中を覗きこんだ。
「やっぱわかんないや」そして、飲もうとした手を止めた。
ちょっと待てよ...。これはもしかしたら罠かもしれない。私を安心させてから、毒を飲ませて...。
「毒なんて入ってないよ」ルアは私の考えを読み取ったかのように、そう言った。
「私だったら、そんなわかりやすい嘘つかないもん」
「こわっ」
すると、ルアは冗談だよーと言ってきた。
恐る恐るスターティーを一口飲む。
「どう美味しい?」
それは不思議な味がした。甘いような苦いような...。
「甘くて、苦くて、...でも落ち着く味」
私はコップの中に漂う星をじっと見つめた。星は消えたり、現れたり。
「あっ!流れ星!!」
「えっ?!本当に?レアだよそれ!!」
「レア?」
「うん、滅多に見れないの!」
「流れ星...いいことあるのかな」
それから私はまた流れ星を見たくて、いちいち確認をしながら飲んだ。だけどそれっきりで、見つからなかった。
「ごちそうさま、美味しかった」
私がそう言うとルアは「こちらこそ、久しぶりに楽しかったわ」と言った。
「ねえ、ルア」
「何?」ルアはコップを洗いながら答えた。
「この家、窓ないの?」これは、最初っから疑問に思ってたことだった。
すると、ルアは動かしていた手を止め、私に背を向けたまま「どうして?」と言った。
「うーん、外をみてみたくてさ。どんな世界なのかなって」
「そう」その声は低くて、少しドキッとした。
「ごめん、忘れて」嫌な予感がして、私はすぐに取り消そうとした。
「夜になったら外見に行くから...それでいい?」ルアは窓のことに関しては何も触れなかった。それになぜ夜なんだろう?今じゃダメな理由があるのかな...。
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